想うこと

桜は組織培養、柿は突然変異から…植物が教えてくれる命のつなぎ方




今年の桜もそろそろ終わりですね


満開の賑やかさが去った後
静かに舞い落ちる花びらたち

桜は、咲いている期間がとても短い。
パッと咲いて、パッと散る
だからこそ見る人の
心に強く残るのかもしれません

「散り際こそが一番美しい」
そんなふうに思わせてくれる花は
桜くらいではないでしょうか



「ソメイヨシノ」染井吉野


この桜は
もともと江戸時代の終わりごろに
生まれた品種で
戦後の復興とともに
全国に植えられていきました


でも、
あれからすでに70年、80年

人でいえばおじいちゃん
おばあちゃんの年齢


今では木が弱り始め

病気になったり
花をあまり咲かせなくなってきた
桜も増えてきました





実は、ソメイヨシノは“
自分の力では増えられない桜”

ソメイヨシノには花粉ができず
タネを作ることができません


だから
「自然に子どもを残す」
ことができない






ではどうやって
日本中に増えていったのかというと
「接ぎ木(つぎき)」という方法で
もともとの親木と
同じ遺伝子を持つ桜を
人の手で育ててきた


つまり
日本中に咲いているソメイヨシノは
全部“兄弟”のような存在


だから一斉に咲き、一斉に散る
それがあの
圧巻の光景になるんだろうな


けれど、同じ遺伝子の
桜が年を重ねて弱っていくのは
避けられない宿命でもあります



そんな中

最近注目されているのが
「組織培養(そしきばいよう)」
という技術


これは、
桜の細胞の一部を取り出して

無菌の状態で育てていく方法

とくに注目されているのが
長生きして元気な桜の細胞を使う


寒さや病気にも耐えて
何十年も花を咲かせてきた
“丈夫な桜”の細胞を培養することで
これから先も元気に咲き続けられる
新しい桜を育てることができる


自然の力に
少しだけ人の知恵を添えて
そんなやさしい未来の形が
静かに動き始めています




桜が春の象徴なら、柿の木は秋の恵み
私たちの暮らしに
もうひとつの「命のつながり」を
届けてくれる存在

私たちアットパーシモンのでは
柿の実からとれる
「柿渋(かきしぶ)」を使って
天然成分だけの自然塗料を作っている


防腐・抗菌・防臭など
昔からの知恵がたっぷり詰まった素材

そして柿の木にも
面白い豆知識があります


もともと
柿はすべて“渋柿”だった

あるとき自然の中で
突然変異が起こり
「甘柿」という
渋くない実が偶然生まれました


今、私たちが食べている甘柿は、
その“たった一本の突然変異”を
「接ぎ木」で大切に
増やしてきたものなんです



また、柿の実には

ちゃんと“種”があって
そこから新しい命が生まれます


自然交配もできるし
人の手でも育てられる


柿の木は
自然と人の知恵がうまく合わさって
命をつないできた木なんですね

ちなみに日本には
樹齢1000年を超える柿の木もある
気が遠くなるような時間を生き抜いて
今もなお実をつけているなんて
本当にすごいことです





桜と柿
一見まったく違う木に思えますが
どちらも「人の知恵と自然の力」で
命をつないできた木という点では同じ


桜は、自分でタネを残せない分
人が手をかけて増やしてきた


柿は、自然の偶然をきっかけに
新しい命を育ててきた

桜の花びらが静かに舞い落ちる春
柿の実が色づきはじめる秋
どちらも自然がくれる美しい時間

そんな時間を未来につなげるために
私たちもまた
自然と向き合いながら
ものづくりをしております

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